エジプトで結婚する場合、日本とはまったく違う制度と宗教的背景を理解する必要があります。
エジプトでは、結婚はまず**宗教的に有効であること(宗教婚)が重視され、その後民事的にも有効にする(法律婚)**という二段構えになっているのです。
特に、ムスリム(イスラム教徒)とコプト(エジプトのキリスト教徒)では婚姻のルールや制限も異なりますし、外国人との結婚にはさらに注意点があります。
この記事では、エジプトの結婚制度の基本から、ムスリムとコプトの違い、外国人との結婚の実情、そして私自身の体験談も交えて、リアルな情報をお届けします。
エジプトの結婚制度の基本
エジプトにおける結婚は、以下のような2つのステップに分かれています。
| 種類 | 内容 | 法的効力 |
|---|---|---|
| 宗教婚 | 宗教的に認められる結婚(教会婚、イスラム婚など) | なし(国家的には未婚) |
| 法律婚(民事婚) | 国家によって登記される結婚(婚姻契約書作成) | あり(戸籍、ビザ、相続などで効力あり) |
ムスリム(イスラム教徒)の結婚
宗教婚の特徴
- **マアズーン(婚姻公証人)**が立ち会い、イスラム法に基づいて婚姻契約が交わされます
- 持参金(マフル)なども契約に明記されます
法律婚への流れ
- 宗教婚のあと、公証局で正式な婚姻契約書を作成・登記
- 登記後にパスポートやIDに「既婚」と記載される
異宗教婚のルール
- ムスリム男性 × キリスト教女性 → OK
- ムスリム女性 × イスラム教以外の男性 → NG
- 法律的に結婚不成立とされる
コプト(キリスト教徒)の結婚
宗教婚の特徴
- 教会での婚礼(教会婚)が必要
- 原則、コプト教徒同士でなければ結婚不可
- 他宗派キリスト教徒との教会婚は基本的に認められない
法律婚への流れ
- 教会婚後、婚姻契約書を民事局で登記
コプト教会婚(宗教婚)は、基本的に「コプト同士」に限られる
コプト正教会の立場:
- コプト教徒は、同じコプト教徒としか結婚できないという宗教的ルールがあり
- たとえ相手がキリスト教徒(例:プロテスタント、カトリック)であっても、教会婚は原則不可
- 相手が改宗してコプト教徒になる必要がある(ただし、実際には非常に難しい)
では、どうするの?→ 民事婚(法律婚)なら可能
コプト教会の結婚式を挙げることはできなくても、民事婚(法律婚)として登記することは可能です。
法律婚での結婚成立の条件(外国人とエジプト人がエジプトで結婚する場合)
- それぞれの国の独身証明書や出生証明書などの提出
- 民事局(エジプトの公証役場)で婚姻契約を結ぶ
- 通訳や翻訳の立ち会いが求められる場合もある
- 登記された婚姻契約書が発行される(Legal Marriage Contract)
この法律婚には宗教的な要素は含まれないため、宗派が異なる国際結婚も成立可能です。


外国人とエジプト人の結婚:宗教によって違う現実
| 相手の宗教 | 結婚の可否 | 宗教婚は? | 法律婚は? |
|---|---|---|---|
| ムスリム男性 × キリスト教女性(外国人) | 可能 | 可能(イスラム法による) | 可能 |
| キリスト教男性(外国人) × ムスリム女性 | 不可 | 宗教的にも法律的にも不可 | |
| コプト教徒 × 他宗派キリスト教徒 | 宗教婚は不可 | 教会婚不可 | 民事婚として可能 |
私の体験談:コプト教徒の夫と日本人の私が結婚するまで
私(日本人)はルター派のクリスチャン、夫はエジプト人のコプト正教徒です。
私たちはまず日本で婚姻届を出し、日本の法律で結婚を成立させました。
その後、戸籍謄本を取得し、それを英語に翻訳+外務省のアポスティーユ+エジプト大使館での認証という流れで、エジプトでも法的に通用する書類を整えました。
この書類を使って、エジプト側に婚姻登記をすることで、法律婚として夫婦関係が正式に認められる状態に。
宗教婚はできた?
残念ながら、私はコプト教徒ではないため、コプト教会での教会婚はできませんでした。
(改宗すれば可能ですが、非常にハードルが高いです)
子供の宗教は?
父親がコプト教徒であれば、子どもは原則として「コプト教徒」として登録されます。
そのため、子どもがコプト教会で洗礼を受けることは可能ですし、実際に多くの国際結婚家庭でそのようにしています。
母親の宗派は基本的には子どもの信仰決定に直接影響しません。
父親がコプトである限り、子どももコプト教徒とされます。
コプト教会での洗礼は、エジプトの身分登録(出生証明など)や将来の冠婚葬祭で重要となります。
日本で先に結婚し、エジプトに届け出るための手続き
私たち夫婦が行った結婚手続きの概要
在日エジプト大使館では入手できませんでした。結婚の挨拶をするためにエジプトに行った時に書類を入手しました。エジプト大使館で入手できなかったのは夫がコプト教徒だからという可能性もあるので、大使館に確認してください。
婚姻要件具備証明書は英語で発行されますので、日本の役所に婚姻届を出す時に自分で日本語に翻訳したものを添えて、添付書類としました。
婚姻要件具備証明書は日本人との結婚を望んでおり、さらに日本国の法律で婚姻の成立を希望している外国人が日本の法律上結婚できる状態にあることを証明するための書類です。日本では重婚は禁止されていますよね。外国人は戸籍を持っていないので独身であることを証明するために提出が必要です。例えば夫がムスリムで、すでに結婚していて第1夫人が別にいる場合は婚姻の要件を満たしていないということになり、日本の法律では結婚できないことになります。
これで日本では婚姻が法的に成立します(戸籍にも反映)
婚姻要件具備証明書の他にもパスポートのコピーや在留カードのコピーなど添付書類が多いので提出先の役場に電話で事前に確認した方がいいと思います。
国際的に証明するために使います。受理されてから、1週間から10日ほどで新しい戸籍が出来上がります。役所の混雑具合ではもっとかかる場合もあり。
婚姻届が受理されると親の戸籍から独立して私が戸主の戸籍が新たに作られました。戸主の身分事項の欄に「婚姻日+配偶者氏名+配偶者の国籍+配偶者の生年月日」の記載が加わっていることを確認してください。外国人夫の戸籍が作られるわけではありません。
私は英語に翻訳しました。
アポスティーユは日本の文書が「真正なもの」として国際的に通用するための証明です。
エジプトは「ハーグ条約非加盟国」なので、本来はアポスティーユではなく「大使館認証」が必要なのですが、大使館によっては**アポスティーユ→大使館でさらに認証(いわゆるハンコ)**の流れで受け入れています。
アポスティーユは本来なら、①まず公証人役場で公証人認証を受け、②その後法務局に移動して法務局長の証明を受け、③その後外務省に移動してアポスティーユを申請し、④後日(一番早くて翌営業日)外務省で文書を受領する、という手順ですが、特定の都道府県では、公証役場でワンストップサービスが使えます。
ワンストップサービスは役場で認証を受けた書類について、法務局の公証人押印証明と外務省のアポスティーユまたは公印確認を一度に取得できるサービスです。これにより、法務局や外務省にそれぞれ出向く手間が省けます。
私はワンストップサービスを利用し公証役場では、1万2千円ほど支払いました。(2015年)
アポスティーユを受けた戸籍謄本をエジプト大使館に持っていくと、裏にハンコを押してもらえます。これで「エジプト政府に提出可能な公式文書」になります。
確かハンコ一つに2万円くらい払いました(ちょっとあやふや)
これで法律婚が成立します。
在日エジプト大使館ではダメで、エジプトへ行く必要があります。
これは何のための書類?
この一連の手続きで作成された書類は、エジプトで結婚を法的に「登記」するためのものです。
つまり:
- 日本での結婚を、エジプト政府に対しても正式に届け出るための準備
- この書類を持って、エジプトの民事局(公証役場など)で登記を行えば、エジプトでも「法律婚」が成立する
- そうすると、配偶者ビザや相続、子供が生まれた場合の出生登録などがスムーズになる
まとめ:エジプトでの結婚には2つの視点が必要
| 観点 | 宗教婚(教会/モスク) | 法律婚(民事婚) |
|---|---|---|
| 結婚の成立 | 宗教的に有効 | 国に法的に認められる |
| コプト同士が原則 | 必須 | なくても成立可能 |
| 外国人との結婚 | 制限あり(特に女性がムスリムの場合) | 手続きを踏めば成立可能 |
エジプトでの国際結婚は、宗教・法律の双方の理解がとても重要です。
特にコプト教徒との結婚は制限が多く、宗教婚を望むなら同じ宗派であることが求められます。
しかし、私たちのように宗教婚を経なくても、法律婚(民事婚)として結婚生活を築いていくことは十分可能です。お子さんの宗教についても、家族で話し合って最善の方法を選べば、エジプト社会の中で自然な形で受け入れられていくと感じました。
日本では、宗教婚自体がないため、法律婚(民事婚)のみの結婚に私は何も違和感を感じませんでした。むしろ法的に有効ではない宗教婚も重要視されていることの方が不思議に感じています。
手続きをすべて完了させるためにエジプトには最低でも2回は行かないといけなかったですし、エジプト大使館も何度も行かないといけないし、本当に結婚の手続きは大変でした。エジプトを2往復したので数年かかりました。ぐすん。
私の経験がお役に立てたら嬉しいです。
それでは、ごきげんよう!












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